動作経済の原則

 経営工学のスキルを学ぶ前に、経営工学の思考を身に付ける必要があります。
どういうことかと言うと、経営工学は様々な制約条件から最適解を求める学問です。「科学的管理法」とも言います。
管理(マネジメント)するので、ムダなく、ムリなく、ムラなく仕事を進めるために組織や働く人々を導く必要があります。
今回はそのための思考の1つである、「動作経済の原則」を紹介します。

原則1:動作の数を少なくする

 まず1つ目は「動作の数を少なくする」です。動作というと「探す、掴む、置く、放す、調べる、保持するなどです」
作業をする際は、いかにこれらの動作からムダや価値を生まない動作を削減するかです。
意外と皆さん気付かぬうちにムダな作業や価値を生まない動作をしているものです。
1秒たりともムダにしないというマインドを持つことを「モーションマインド」と言います。
「このくらい良いか、ここまでしなくても良いか」、などと思わず、徹底的にムダを取り除きます。
価値を生む動作を増やし、自社の生産性や作業者の熟練度を高めて行きましょう。
 ちなみに、価値を生む動作とは、今まさに製品を作っているその瞬間です。それ以外は全てムダだと考え、職場を改善して行きましょう。

原則2:両手を同時に使う

 2つ目は「両手を同時に使う」です。1つ目でムダを取り除いたら、今度は動作を効率的に行えるよう、両手を使った動作の時間を増やします。片方の手が動いている時に、もう片方の手が休んでいると、その動いていない手の稼働率が下がります。モーションマインドの心得で、どうしたら両手を同時に使った作業ができるか職場環境の整備、または訓練を行い両手で作業できるスキルを身につけることが肝要です。

原則3:移動の距離を短縮する

 3つ目は「移動の距離を短縮する」です。原則1と2で動作を効率的にした後は、作業者が仕事を進める上で、どんな風に移動しているかを把握します。移動は価値を生みません。言わば、移動とはムダな作業なのです。作業者の移動が極力短くなるような設備配置だったり、移動距離を縮めるためのレイアウト変更が求められます。
 また、人だけではなく、モノの移動についても同じです。モノの移動については、「運搬活性指数」といった指標で評価できます。人とモノを極力移動しなくても済むような職場環境づくりが肝要です。

原則4:動作を楽にする

 4つ目は「動作を楽にする」です。作業には軽作業、中作業、重作業があります。軽作業ではあれば良いですが、中作業、重作業は作業者の負担が大きくなります。そして、疲労が溜まり、集中力が低下し、ミスが発生、最悪の場合労災となる恐れもあります。動作を楽にすることは、従業員の満足度向上にも繋がるため、企業にとっては生産性の向上と従業員の職場満足度向上の相乗効果を得ることができます。今よりもっと楽に正確に作業ができるかを常に考え、職場をより良い環境へ築いて行ってくださいね。

まとめ(実践に移すために)

 動作経済の原則は、確かに実行すれば企業にとっても個人にとってもとても有意義なものとなります。
しかし、ここで一番言いたいのは、このような思想を持つことです。動作だけに限らず、日頃の仕事で、ムダがないか、ムリな作業になっていないか、忙しい時と暇な時のムラがないか、常にアンテナを張って改善していくことが肝要です。
 動作経済はあくまでもそのための一つの考え方、手法に過ぎません。明日から早速このマインドを持って仕事に臨んでみてください。きっと様々なムダ・ムリ・ムラに気づくことができるはずです。まずはそこに気づくことが重要です。
 そして、一つずつ時間がかかっても良いから、着実に職場を改善して行きましょう。このマインドさえ持てれば、必ず成果を出せます。仲間になってくれる人も現れます。思い立ったが吉日です。ぜひ、行動に移しましょう。
 

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