5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)

 経営工学のスキルを実践する前に、必ずやらなければならないことがあります。それは5Sです。今更5S?と思われる方が多いと思います。5Sの詳細はネット検索すればいくらでも情報収集できます。また、5Sにまつわる書籍もたくさんあります。しかし、実際にどの状態であれば5Sができていると言えるのか。どうすれば定着し、成果の出る5Sとなるのか。中々その答えに辿り着く組織や個人の方は少ないのではないでしょうか。今回のブログではその辺りに着眼点を置いて私の経験を元に綴っていきます。

自社の5Sレベルを確認しよう

 まずは自分達の5Sレベルはどこなのか、そこの確認からです。私の経験上、5Sのレベルは次の6つの段階に分かれます。レベル0:5Sに関する知識が全くないレベル。
レベル1:5Sを知っているレベル。
レベル2:5Sが重要であると認識しているレベル。
レベル3:5S活動を組織的に実施しているが、成果までは出ていないレベル。
レベル4:5S活動により成果が出ているが、継続しないレベル。
レベル5:5S活動により成果が出し続けているレベル。

 もちろんレベル5が理想です。さて、みなさんの会社または組織はどのレベルでしょうか。レベル3が多いのではないでしょうか。定期的な活動をしてはいるけど、形骸化している組織は多いです。
 それでは、レベルを確認したら、次のレベルを目指しましょう。次からはレベル毎の対応策を述べていきます。

レベル0の組織が実施すべき対応策

 5S知識が皆無の方、組織に必要なのは、5Sとは何なのか、5Sをすることでどんな成果が出るのかを知ることです。
今の時代、ネットで検索すれば5Sに関する情報が5万と出てきます。まずはそこから確認しましょう。
ただし、そこで終わってはいけません。次に5Sに関する書籍を3冊は読みましょう。
なぜ3冊かというと、書籍によっては同じ5Sでもやり方が異なったり、自社に合う合わないも出てきます。
3冊読んで、1番しっくりくる書籍を選択し、じっくり読んで、5Sの知識を高めましょう。
5Sを一緒に取り組む仲間に勧めるのも有効です。なぜなら5Sは1人では進められないからです。周りの協力が必要不可欠になります。ぜひ仲間を集めましょう。自部署もしくは他部署に必ず1人や2人は協力的な仲間がいると思います。
 経営者の方、工場長や管理職の方でしたら、自社もしくは自部署で5Sで成果を出す目標を立てることです。成果を出すと宣言します。後は、PDCAサイクルにて5Sを進めていきます。
具体的な目標は、1年間で、製品品質不良の削減50%、生産性20%UP、ヒューマンエラー0件などが良いです。5Sを活用できれば、これらを達成することができます。

レベル1の組織が実施すべき対応策

 レベル1では、何となく5Sは聞いたことあるし、やった方が良いんだろうな・・・といった具合です。または、5Sなんて必要ないでしょ。そんなんで何も良くならないよ。と思っている組織や個人の方ではないでしょうか。
 はっきり言って、5Sは必ず成果が出ます。これは言い切れます。なので、レベル1の組織では、5Sの重要性を認識することから始めます。
 ではどうやって認識するか、レベル1の段階では書籍も良いですが、もっと効果的なのは、5Sに関するセミナーに参加することです。書籍では数百ページを読むことになります。正直、何回も繰り返し読まなければ頭に入りません。
そもそも繰り返し読む時間の確保やモチベーションを保つことが難しく、1度さらっと読んで終わってしまうでしょう。
そもそも、5Sに必要性を感じていないのですから、読書も身に入らないでしょう。
 そんな時は外部からの影響が一番です。コンサルタントに相談するのも有効です。相談だけならどんなコンサル会社も無料で聞いてくれる所が多いです。これを活用しない手はないです。
昨今では、ZoomやTeamsを活用したwebセミナーも多いので、手軽に受講できると思います。
 外部の力を借りて、手軽にかつ効果的・効率的に5Sの重要性を認識しましょう。

レベル2の組織が実施すべき対応策

 レベル2では、5Sの重要性を認識していはいるが、いざ5S活動の実践には至っていない組織、または、何から実施すれば良いか分からない組織が当てはまると思います。
そのような組織は、まず5Sを定期的に実施するために5Sを実施する日時を決めます。例えば、毎月15日の15時から1時間だけ実施するなどです。5S活動を実践に移せない組織の多くは、忙しいから、そんな暇ないからといった理由です。
なので、1時間で良いから実践する時間を捻出することに注力してください。理想は全社で一斉に実施することですが、部署毎で忙しさも異なるでしょう。よって、5Sグループなり、5S委員会なり、各部署から人数を集めて小集団を作ると良いでしょう。または、部署毎で実施します。5Sが定着すれば、これまでのムダ・ムリ・ムラが解消され、より5S活動に時間をかけることができるようになります。
以上のことから、同じ場所、同じ時刻に、同じ時間だけ5Sを実践して行きましょう。
 そして、何から実施すれば良いか分からない場合は、「整理」に注力しましょう。5Sを成功させるためには、まずは整理です。整理とは、要るものと要らないものを分けることです。
 ただし、その分け方が重要です。今日使う物、今週使う物、1ヶ月の間に使う物、半年に1回使う物、1年以上使わない物、もう使う用途がないけど何となく所持している物、に分けると良いです。分けた後はそれをどう保管するかです。
今日使う物以外は、極力現場に置かないことが鉄則です。なぜなら、今日使う物以外を置くからミスが発生するからです。
例えば、似たような見た目の原材料や道具、似たような名前の原材料や道具、それらが同じ場所にあると人は必ずと言って良いほど間違えます。人はどんな人間でも作業を簡略しようとしてしまう生き物です。見た目が同じなら大抵の人は間違えます。みなさんの日常を思い出してみてください。朝ごはんを食べる時、お昼ご飯も用意しますか?朝起きて顔を洗う時、明日の分のタオルを用意しますか?人によっては用意する方もいらっしゃるかもしれませんが、少数派です。余計な物があるとごちゃごちゃし、物を探すムダ、間違えて不良を起こすムダなど様々なムダを生みます。
 なので、今使わない物は用意しない、現場に置かない、これだけでも多少なりとも5Sの効果は出てきます。

レベル3の組織が実施すべき対応策

 レベル3では5S活動を実施しているのにも関わらず、成果が出ない組織です。このような組織が一番多いと認識しています。形骸化してしまい、5Sパトロールはするけど、〇〇が汚い、□□の定位置化ができていない、などと言った見た目の良し悪しでしか指摘しないことが多いです。
 ではどうすれば成果を出せるか、1つ目は5Sパトロールを実践している組織であれば、指摘する際に、それを実施しないとどのような問題が発生するかまで深掘りして指摘をすることです。そうしないと、掃除して終わり、定位置化して終わり、となってしまい、何の成果も出ません。要は、目的が「5Sで成果を出す」から、「掃除すること」「定位置化すること」にすり変わってしまっているのです。
 2つ目は、経営層や管理者がコミットすることです。5S活動ですが、経営層や管理者が現場任せになっている組織が非常に多いです。経営層や管理者が率先して本気で実施することで、下の人間はついて行きます。逆に経営層や管理者が本気でない組織は成功しません。まれに、熱意・情熱を持ったリーダーシップを発揮する社員がいる組織は、その人を筆頭に成果を出して行きますが、それは極めて少数です。組織によってはそのような社員を煙たく思っている経営者や管理者もいます。その組織の行く末がどうなるか、言うまでもないですね。
 3つ目は、目的を振り返ることです。5Sを実践してどうしたいのか、何を達成したいのか、その目的がないと、ただの活動になってしまいます。経営層と現場との意思疎通が欠かせません。目的を持ち、目標を立てることで、その目標を達成するための活動を実施できます。さらにはその成果を正しく評価することです。せっかく達成したのに、何のインセンティブもなければ、社員はやる気を失い、5S活動は弱体化していくでしょう。達成できなくても、どうすれば良かったか、何が悪かったか、次年度には何が必要かなどを反省し、それを経営層や管理者がフィードバックすることです。

レベル4の組織が実施すべき対応策

 レベル4では、成果は出たけど、継続して成果が出ない、1度きりで次が続かない、次は何をしたら良いか分からないといった状況ではないでしょうか。継続しない1番の理由は、人が育っていないことです。毎回同じメンバー、5Sの教育を1度したきりで継続的に教育をしていない、要は5S活動を向上させる「人」という資源が成長していないことです。
 人もどんどんアップデートしなければ、5Sどころか、企業の存続も怪しくなってしまいます。「ヒト・モノ・カネ」などの資源の内、全てを生むのはヒトです。ヒトの成長がなければ何も成長しません
 よって、定期的な5Sに関する教育を実践することです。経営層・管理者は、教育のための予算化、時間確保に注力せねばなりません。そして、教育計画を立案し、実践していくことが求められます。
 具体的にどのような教育を行っていくかですが、1番効果的なのは他社の活動を見ることです。昨今はコロナウイルスの影響で工場見学など他社に行く機会が減ってしまいましたが、それもだいぶ緩和されてきました。今一度他社の5S状況を確認できる機会がないか調べてみましょう。コンサル会社が主催するベンチマーキングといった、対面またはwebで5Sの状況をリアルタイムで紹介するといった取り組みもあります。
 他社の活動を体験することで、自社の足りない部分、自社にも活用できる活動、自社で更に進化させられる取り組みに気付くことができるでしょう。井の中の蛙にならぬよう、外の世界に興味を持ち、積極的に関わって行きましょう。

5Sは私生活でも活用できる

 5Sは何も職場だけではありません。私生活でも活用できます。クローゼットの中、押入れの中、冷蔵庫の中、キッチンの棚、本棚、洗面所、どこでも活用できます。特に整理が効果的です。もったいないから、まだ何かしらで使えそうだから、いつか使うだろう、などの理由で処分できないもの、けっこうありますよね。そう思った物は処分しましょう。処分とは捨てるだけではありません。メルカリやジモティなどで意外と売れたりします。とは言え、自宅の5Sは中々手に付かないものです。私も自宅の5Sはやり始めるまでに気持ちが乗らず、時間がかかったりします。
 そんな時も、やはり、時間と場所を決めることです。一気に全部やろうとすると気持ちは乗りません。今月は本棚、来月は冷蔵庫、再来月はクローゼット、と、月1程度で毎月第2日曜日か第3日曜日の朝9時から1時間だけと決めてしまえば、
人間は意外とやるものです。やり始めるとこだわりが強くなって1時間で収まらず、気づけば2〜3時間実施していたなんてこともあります。この日時と場所の計画を立てることが、私生活での5Sの取り組みを進める良い方法です。ぜひお試しあれ!!

まとめ

 ここまで読んで頂きありがとうございます。今回は5Sの実施状況、レベルには0〜5の6段階あることを紹介させて頂きました。そして、その該当するレベルからレベルUPするための対応策を述べさせて頂きました。1つずつで良いので、確実にレベルUPし、職場環境の改善、働きやすさ、働きがい、成果を作って頂けたらと思います。
 もし、うまくいかない時は、ぜひ「お問い合わせ」からお問合せください。御社の、あなた様のお力になれると思います。
相談だけなら無料です。ぜひご活用ください。
 

おまけ

 最後に「表示」について簡単にご紹介させて頂きます。5Sで整理整頓した後は、必ず表示をしてください。
ただし、ただ表示するだけではダメです。5W1H(何を、いつ、どこに、なぜ、誰が、どのように)を意識して表示してください。この表示をするだけで、仕事のミスが格段に減ります。多くの企業は「何を」しか表示していません。
これでは、その表示されている物が、そこに置かれ保管されていることが正しいのか、誤っているのかが分かりません。5W1Hが難しいなら、3W1H(いつまでに、誰が、何を、どのようにするか)は最低でも表示しましょう。
 具体例で示すと、原材料を入手したけど、外観に異常があったとします。多くの企業は不適合置場という場所に保管し、
処置が決まるまで放置しておくことが多いと思います。そうなると、担当者が忘れてしまった際、ずーっとその場所に保管されることになります。そこで3W1Hを表示すると、次のような表示になります。「材料入荷部署が、○月○日までに、△△(当該原材料)の処置を確認する」と表示します。そうすると、日付が過ぎていた場合、担当者以外の人も気付くことができます。期日が過ぎて確認が終わっているのか、終わっていないのか、アクションを取ることができます。このように、イレギュラーなものについては、3W1Hにて表示することで、抜けなく、損失なく、処置を的確に実施できます。たかが表示、されど表示です。その物を見れば、それがそこに置いてあるのが正しいのか正しくないのか、誰が見ても分かる状態を作り上げて、職場の職務遂行レベルを向上させて行きましょう。

 

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